2025.8.23. 第23回「シベリア・モンゴル抑留犠牲者追悼の集い」を開催しました

  

 1945年の8月23日にソ連軍最高司令官スターリンが50万人の日本人捕虜をシベリアに強制移送する秘密指令を発した8月23日に、毎年国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で「シベリア・モンゴル抑留犠牲者追悼の集い」を開催しています。

 今年も8月23日午後1時から旧ソ連・モンゴルで収集された遺骨の眠る国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で「シベリア・モンゴル抑留犠牲者追悼の集い」を開催しました。2003年に始まった集いは今年で23回を数えました。厚生労働省・外務省代表、各党国会議員、駐日カザフスタン、ウズベキスタン大使館、抑留体験者、遺族、関係団体、研究者、ジャーナリスト、一般市民の方々、約180人が参列、献花くださいました。

 シベリア抑留者支援センター、シベリア立法推進会議、韓国シベリア朔風会、日本・ロシア協会の共催で、厚生労働省、外務省、東京都、千代田区、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、産経新聞社、日本経済新聞社、東京新聞の後援をいただきました。

 今年も、恒例のバリトン歌手・古川精一さん(遺族)の「異国の丘」の独唱と山形真成さん(遺族)のバイオリンの伴奏で始まりました。全員で黙祷の後、主催者代表挨拶、厚生労働省大臣挨拶、弔電紹介と続き、各政党代表からも追悼の言葉をいただきました。遺族の追悼の言葉は、今年は江副芳徳さんと小嶋雄二さんが述べてくださり、最後に全員で献花を行いました。 (写真=山本康行) 

主催者代表挨拶 実態解明・検証を進め、教訓の継承と発信を  

                     西倉 勝


 大変な暑さの中を、今年もこうして多数の方々がご参列くださり、心より感謝申し上げます。

 戦後80回目の8月23日を迎えました。スターリンがシベリア抑留の秘密指令を出した日であります。

 シベリアから帰ってきた私ども抑留者の平均年齢は今年102歳、私も100歳であります。今日は98歳の呉正男さん、佐藤秀雄さんも一緒に参列していますが、私どもがこうしてお話できるのもあと何回あるか分かりません。ご遺族もまた年を重ね、鬼籍に入られる方も出てきました。

 シベリア・モンゴルから帰ってきた1万7千余柱が眠る千鳥ヶ淵この納骨堂の前に立ちますと、いつも申し訳ない気持で一杯になります。80年前の今日は、まだみんな元気で生きていたのです。戦闘で死んだわけではないのです。栄養失調、病気、過酷な労働で、大部分の方が最初の冬を越せずに、亡くなったのです。住居も食料も圧倒的に足らないことが分かっていたにもかかわらず、強引に進められた拉致事件でした。「戦没者」というより「拉致被害者」です。

 私も急性胸膜炎で5ヶ月入院しましたが、なんとか生きて帰ることができました。呉正男さんは体重が20キロ近く減って舞鶴に帰って来た時は41キロでした。銃殺された方もおられます。11年の長きにわたって抑留された方もおられました。幸い生きて帰ることができた私たちは、ですから、この悲惨な拉致・抑留事件を語り継ぎ、伝える責任があります。

 「飢えと寒さと強制労働で、大変でしたね」、「ご苦労さまでした」という同情・慰藉だけでなく、なぜこんなひどいことが起きたのか? どこで間違ったのか? なぜ防ぐことができなかったのか? を教訓として残さなければなりません。その教訓は、日本だけでなくロシアでもウクライナでも、中東でも、世界に発信して、生かされなければなりません。そうでなければ、亡くなった6万人もの方々は浮かばれません。

 そのためにも、実態解明、検証が大切です。シベリア特措法から今年で15年が経ちましたが、実態解明が進んでいません。抑留された人数は本当は何人だったのか? 各都道府県から何人が抑留されたのか? 女性は何人いて、台湾や朝鮮出身の方は何人いたのか? 民間人は何人で、裁判にかけられた人は何人いて、刑死・銃殺された方は何人なのか? もっとも基本的なことが明らかにされず、原因や責任の究明も放置されたままです。新型コロナとウクライナ問題の影響で、この5年間に未執行の事業予算がかなりあるのではないでしょうか。資金と人材を集中的に投入して、遅れを取り戻していただきたい。

 亡くなった方々の名前をきちんと残したいと、故・村山常雄さんが一人で作成された4万6300人の名簿を48時間かけて交代で読み上げる追悼行事を5年前から行っており、今年も私も参加します。亡くなった一人ひとりに、名前があり、顔があり、親がいて、妻や子どもがいたのです。1年に1回ですが、一人ひとりの名前を読みながら、死者たちを忘れないことを誓い合う、死者との貴重な出会いの場となっています。

  「満洲」、シベリアからウクライナ、ガザに続くこの80年間の負の歴史に真摯に向き合わなければなりません。一方的な軍事侵攻、捕虜・人質、難民、いずれも80年前に東アジアで私たちが体験したことでした。殺害、暴力、破壊、拘禁、いずれもあってはなりません。思想・信条、民族や人種の違いを超えて、人の命を守ることの大切さを、20世紀に大変な犠牲を払って、私たちは学んできたはずでした。重ねて、ウクライナとガザでの即時停戦を求めます。ロシアとイスラエルは直ちに兵を引くべきです。これ以上、人の命を奪い、失ってはなりません。

  「戦後80年」。シベリア抑留問題の残された課題の早急な解決のために国民的な議論を求めます。6万人を越える犠牲者全体の追悼は、民間ではなく、国が主体となって行うべきです。朝鮮や台湾出身の方々の問題も未解決のままです。資料の収集・保管・活用も喫緊の課題です。党派を超えた取り組みを要請します。

   千鳥ヶ淵戦没者墓苑とユーラシア大陸各地に眠るすべての抑留犠牲者の御冥福を心よりお祈りいたします。

   ご参列のご遺族、元抑留者、国会議員、政府、各国公館、関係団体代表、支援者・ボランティアの皆様にお礼を申し上げ、また皆様のご健勝とご多幸をお祈りして、主催者のご挨拶とさせていただきます。  

■挨拶 福岡 資麿 厚生労働大臣(代読・岡本利久大臣官房審議官)

41107名の身元を特定、20264柱の遺骨収集

 第23回シベリア・モンゴル抑留犠牲者追悼の集いの開催に当たり、一言、御挨拶を申し上げます。

 戦後、酷寒の地において、祖国を思い、愛する家族を案じつつ、劣悪な環境下で数多くの方々が強制抑留の末に亡くなられました。御遺族におかれては、最愛の肉親を失い、幾多の苦難に見舞われながら戦後を生き抜いてこられたと拝察致します。戦後80年を迎えるにあたり、改めて、遠く異境の地で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、御遺族の皆様に対し、お見舞いを申し上げます。

 厚生労働省は、これまで、戦後強制抑留者特別措置法に基づき、平成23年8月に閣議決定された「強制抑留の実態調査等に関する基本的な方針」を踏まえ、関係省庁と連携し、民間団体等の協力も得つつ、4万1107名の方の身元を特定し、シベリア及びモンゴルにおいて慰霊巡拝を実施してまいりました。

 また、シベリアやモンゴルでの遺骨収集事業については、平成3年以来、2万264柱の御遺骨の収容を行ってまいりました。厚生労働省としては、国際情勢も考慮しながら、令和11年度までの遺骨収集事業の集中実施期間に、未だ帰還を果たされていない多くの御遺骨を、一日でも早く、一柱でも多く、ふるさとにお戻しすることができるよう、国の責務として全力を尽くしてまいります。

 今日、戦中・戦後の労苦を体験された方々が少なくなる中、先の大戦の教訓を風化させることなく継承していくことの重要性が高まっています。若い世代へ先の大戦の記憶を語り継いでいくとともに、世界の恒久平和と繁栄に、能う限り貢献していくことをお誓い申し上げます。

 終わりに、抑留中に亡くなられた方々の御霊の安らかならんことを、そして、関係者の皆様方の御平安を切に祈念して、挨拶といたします。

        

国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑 昭和34年(1959年)に国によって建設され、戦没者の遺骨を納めている墓苑です。先の大戦で、海外で亡くなった軍人、軍属、一般邦人等約240万人の戦没者の遺骨のうち、政府等が外地から持ち帰り、引き取り手のない遺骨が約37万柱納められています。https://www.boen.or.jp/ 

抑留犠牲者46,305人の名前をリモートで122人が読み上げました 

 また、同日23日夜から26日に48時間かけて故・村山常雄さんが作成された46,305人分の死亡者名簿をリレー式に読み上げる追悼イベントを行いました。今年も全国から、ご遺族16人を含めて、10歳から100歳まで、122人が参加くださいました。リモート(Zoom)や電話のほか、都内・横浜・新潟県糸魚川・同名立・山形県新庄の会場からも参加いただきました。来年も7回目を行う予定です。専用ホームページをご参照ください。⇒  https://2020redress.wixsite.com/46hourszoom    

   


    


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【緊急声明】

2022年02月25日 00:00
              緊急声明 ロシアはウクライナへの軍事攻撃を即時中止し、平和的交渉を  平和と人の命の大切さを説く活動を長年続けてきた立場から、緊急に声明します。 ...

舞鶴・シベリア抑留関係資料等のユネスコ世界記憶遺産登録決定を歓迎するコメント

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 本日(10/10)、舞鶴引揚記念館(舞鶴市)が所蔵する「シベリア抑留」と引き揚げ関係資料がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産に登録されたことが発表されました。  かねてより、署名などでこの動きを支持・支援してきた立場から、登録決定は、まことに喜ばしく、関係者各位の多年の努力に敬意を表します。「戦後70年・抑留70年」の時機を得た快挙です。  60万人以上の日本兵・軍属・民間人が旧「満州」(現・中国東北部)・北朝鮮からソ連領内とモンゴルに移送され、飢えと寒さと強制労働のために、6万人以上が死亡した悲惨な歴史が、国境を超えて、世界の記憶として認定されたことを歓迎します。また、これを機

2014年8月23日第12回「シベリア・モンゴル抑留犠牲者追悼の集い」開催

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抑留死亡者名簿研究・村山常雄さん(88歳)逝去

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